マクセル「クセがあるスタジオ」
Studio / Kyoto / 2024
New construction
Design and Supervision
Photo : TATSUYA TABII

























「多義的で可変的な、ゆらぎのある中庸」
マクセル株式会社(以下、マクセル)の敷地の一画、約2万㎡を活用し、京都府および公益財団法人京都産業 21との協働により「アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都(以下、ATVK)」が計画された。「クセがあるスタジオ」は、そのATVK内の企業ブースサイトに建つ、100㎡程度の小さな建築である。
このスタジオでは、マクセルと次世代を担う人材、またこれまで出会わなかった感性やテクノロジー、創造性が「混ざり合う」ことで、新たな価値を生みだすことを目的とし、若手クリエイターを対象としたアワード(クセがあるアワード:混)やトークイベント、またワークショップ等が開催される。
空間の特性として「回遊性」と「中心性」の両方が求められたことから、中央に「九間(ここのま)」の大きさのあるホールを内包した、回廊形式のプランとした。ホールと回廊の間には、ワイヤーメッシュによる、透過する展示壁を「建具」として設え、シチュエーションに応じて変容する空間を意図した。併せてデザインしたオリジナル什器(TABLE_MX)は、ロゴマークのカタチを踏襲しながら、ワークショップの際は円卓として、展示の際は静的な空間に動きを与えるクネクネとした展示台として、空間の変容を助長する。
プログラムの特性から「開放的な展示空間」を実現するため、周囲に庇を1.8mはね出している。(日射シミュレーションで寸法を決定)2方向はね出しとなる四隅は、ハイサイドライトの立上りを利用して、ワイヤーで庇を上部に吊り上げる構造とした。ハイサイドライトの斜材は、ワイヤーの反力を受ける構造材であると共に、中央の5.4mスパンを支えるトラス梁としても機能する。
外周部のワイヤーは、ATVK【アート/テクノロジー/ヴィレッジ(ネイチャー)】の名前にちなんで、ストリングアートであり、テクノロジーの要素を持った構造ワイヤーであり、自然の要素を持った緑化ワイヤーでもある。(当初鉄骨造として、全てを耐震ワイヤーとして計画したが、コスト削減のため、木造に変更し、構造ワイヤーの位置を限定している。)
可動式展示ウォールや、オリジナル什器、外周部を取り巻くワイヤー等、建築を構成するさまざまな要素に複合的な意味を「混ぜ合わせる」ことで、多義的で可変的な、ゆらぎのある中庸な状態を目指した。今後この空間に、次世代を担うクリエイターの作品が加わり、また様々な活動が折り重なることで、多様な「クセ」が表出し、少し先の未来を共に創造する場として醸成されることを見守っていきたい。
名称
マクセル クセがあるスタジオ
所在地
京都府大山崎町
種別
新築
業務内容
設計・監理
クリエイティブディレクション
Loftwork inc.
企画
株式会社802 メディアワークス
構造設計
IN-STRUCT / 東郷拓真
照明設計
Yu light / 種子島 ゆり
施工
木村工務店 / 担当: 冨桝 泰人、山元 智浩
植栽
園園 / 中山智憲
ロゴデザイン
一ノ瀬 雄太
コピーライター
はせがわてつじ
写真
足袋井竜也
写真(展示風景 38~44)
大竹央祐
ダイアグラム・模型写真
kvalito